編集手帳

しかるべきためらいがなかったか

投稿日:2017年8月29日 更新日:

2017年8月29日付け「編集手帳」要約

「臍の緒は妙薬」という短編がある。
作中、主人公の女性が幼少時に思い肺炎を患ったとき、母が臍の緒をのませてくれたに違いないと、思い込んだ。
臍の緒は胎児の命を支える管で、特別な力を秘める。
そんな観念であったのだろうか。
臍の緒に含まれるさい帯血は白血病などの治療に成果があるが万病の特効薬ではない。
そのさい帯血の投与を巡り、医師ら6人が逮捕された。
彼らがうたった大腸がん治療や美容の効果は立証されていない。
小説の女性は臍の緒に執着しつつも、抗癌剤治療をしている妹に〈妙薬〉の話を持ち出せない。
しかるべきためらいだろう。
いわんや医師においてをや。

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