編集手帳

銀幕に奇跡を求めた人

投稿日:2017年2月23日 更新日:

2017年2月23日付け「編集手帳」要約

40代で日活を解雇され、50代のときに映画賞を総なめにし、
60代で職安に失業保険をもらう手続きをした。
薄情な浮き沈みの境涯に愚痴の一つも出そうなものだが、
「好物の煮豆を食べ、酒を飲み、拾う神を待つだけだね」
と語っていた鈴木清順さんが93歳で亡くなった。
その人生論には努力や精進を説いたくだりがない。
〈不得意なものから奇跡は生まれぬ〉
不遇結構、無理解もよし。
天から授かった審美眼だけを得手と信じ、銀幕に“奇跡”を追い求めた人の矜持だろう。

-編集手帳

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